ベトナムの鉄道は、首都ハノイと経済の中心ホーチミン(サイゴン)を結ぶ南北線とハノイからサパ方面のラオカイなど地方都市を結ぶ5つの路線があります。今回は主に、ベトナム北部ハノイとベトナム南部ホーチミンの約1726kmを結ぶベトナム統一鉄道(南北線)について紹介します。
ベトナム統一鉄道
ベトナム統一鉄道とは、ハノイ駅ーサイゴン駅(ホーチミン)間の1726kmを結ぶ長距離鉄道で、ベトナム国鉄(VNR=Vietnam Railways)が運営しています。1726kmといわれてもピンとこないと思いますが、日本でいうと新幹線で新青森から新山口まで移動するのとほぼ同じくらいの距離です。ちなみにこの場合、乗り換えの時間などを考慮しても9時間ほどで到着できます。
線路の形状(線形)はかなりいいので、軌道や橋梁と車両の性能がしっかりしていれば、南北線のほぼ全線で70km/h以上での走行が可能になっていますが、車両の性能が追いついていないために速度は50km/hほどでかなり遅く、ハノイからホーチミンまで約最速で約33時間ほどかかります。
それぞれの便名には頭にSEがついていて、ハノイから南下する便が奇数(SE1、SE3、SE5、SE7)、ホーチミンから北上する便が偶数(SE2, SE4, SE6, SE8)となっています。ハノイからホーチミン(サイゴン)までに30を超える駅があり、人々の移動手段としてだけでなく、物資の運搬などにも利用されています。
特に、多くの荷物を運ぶベトナム人が利用している場合が多く、都市部から田舎へ帰省するベトナム人は、一人で持ちきれないほどの荷物を持ち込んで移動していたりします。
統一鉄道の歴史
ベトナムの鉄道の歴史は、1881年にサイゴンーミトー間(全長約71km)の路線が開通したことから始まったといわれています。当時はまだ、フランス植民地の仏領インドシナの時代で、フランスのインドシナ総督の主導で鉄道は完成しました。
その後、ラオスやカンボジアなど他国との路線も整備され、中国南部昆明(現在の雲南省昆明市)とハノイを結ぶ路線のうち、現在のベトナム領にあたる部分は1905年に、全線は1910年に開通しました。
この路線は、山岳地帯の鉄道であったため速く建設できるように、軌間は1,000mmのものが使われ、以後のベトナムでも多くがこの軌間で建設されていきました。ちなみに日本で主流な軌間は1,435mmですので、日本より狭くなっています。
その後、ハノイーサイゴン(現在のホーチミン)を結ぶ路線が1936年に開通しましたが、南北の分断の際にはこの鉄道も南北に分断されました。
ベトナム戦争をはじめとする戦争により何度も線路が破壊されては、修復してを繰り返し、ベトナム戦争終結の1年後の1976年に全線修復が完了し、それ以後は南北統一のシンボルとして現在に至ります。現在の「統一鉄道」という呼び名も、1976年の全線修復が完了した後からつけられたものです。
列車の速度が遅く移動にかなりの時間がかかるため、長距離移動は飛行機、短距離移動はバスというように、列車以外の移動手段が選ばれてきたため、経営は芳しくなく路線の老朽化が進んでいます。これに対応するため、1993年からは円借款による南北鉄道の橋梁の補修や架替が進められています。
統一鉄道の停車駅
ベトナム統一鉄道は、ハノイーホーチミン間約1726kmを結ぶ路線がメインで、その途中には30を超える停車駅が存在します。ここでは、観光などで立ち寄る可能性がある一部駅とハノイからの所要時間、ハノイからの距離を紹介します。各情報は、Vietnam Railwaysが公式HPで公表している情報を参考にしています。
駅名 | ハノイからの所要時間 | ハノイからの距離 |
ハノイ(Hanoi) | – | – |
ニンビン(Ninh Binh) | 約2.5時間 | 115km |
ヴィン(Vinh) | 約5.5時間 | 319km |
ドンホイ(Dong Hoi) | 約10時間 | 522km |
フエ(Hue) | 約13時間 | 688km |
ダナン(Danang) | 約15.5時間 | 791km |
ニャチャン(Nha Trang) | 約25.5時間 | 1315km |
ホーチミン(Saigon) | 約33時間 | 1726km |
統一鉄道の車両紹介
ベトナム鉄道公社の路線は全て非電化路線であるため、すべてディーゼル機関車を使用し、機動力は高くないため、最高速度は50km/hほどです。また、車両によってその性能が異なっており、基本的にSE1,SE2のように番号の若い車両が性能が高く、番号が遅くなるほど性能が悪くなる傾向にあります。
また、車両によってはエアコンがないものがあります。その場合には、天井に扇風機が設置されていますが、よほどのことがない限りはエアコン有りの車両を選択するのがおすすめです。
車内の座席
ハードシート、ソフトシート、ハードベッド(6人1室)、ソフトベッド(4人1室)があります。
ハードシート
直角の椅子で短時間の移動であれば問題ないですが、長時間の移動には向きません。詳しくは後述しますが、ハイヴァン峠を見るためだけに1区間だけ乗車するといった場合にはこちらでも問題ないでしょう。
ソフトシート
2列+2列の個別リクライングシートで、寝台まではいかなくてもある程度長距離を利用するのであればこちらがおすすめです。ただし、日本の電車を想像するとがっかりする可能性があるため、期待値は低めにしておくのをおすすめします。
ハードベッド
6人1室のコンパートメントタイプで、各ベッドは折り畳み式になっています。客室の高さは他の車両と同じですので、上段にいけばいくほど狭く圧迫感があります。
イメージとしては、多目的トイレなどに設置してある折り畳み式のこどものおむつを替える台が大人が寝ることができる大きさになっているのを想像してもらえればわかりやすいと思います。あまりお勧めはできませんが、予約するなら下段一択です。
ソフトベッド
4人1室のコンパートメントで、ハードベッドよりも快適に休息をとることができます。4人部屋ですので家族で貸し切りにするなどもできます。こちらは2段ベッドが2台設置してあるような感じですので、可能であれば下段がおすすめです。
統一鉄道の車窓から眺める見どころ
ハイヴァン峠
ハイヴァン峠とは、フエからダナンに向かう際に通る峠であり、絶景スポットとして観光客や全国の鉄道ファンから注目を集めています。車窓から見える断崖から見える海は息をのむほどきれいで、峠を通る際は、曲がりくねった道が続いていることもあり、速度が落とされます。
このタイミングで、車窓や列車の連結部にあるドア付近からパシャパシャと写真を撮ることができます。筆者が乗車した際には、天気は良かったのですが、「窓が汚い。。。」ということで少しこもった写真になってしまいましたが、しっかりと絶景を楽しむことができました。
また、日本からダナンへの路線が始まったことにより、ベトナム中部への観光客が増えたこともあり、少しずつ人気が出てきています。
統一鉄道のチケットの購入方法
ベトナム鉄道のチケットを購入する方法としては、①駅の窓口で直接購入する、②オンラインで購入する、③旅行代理店などに依頼して購入するの3つがあります。予約の際には、どの場合でも、パスポートの情報が必要ですので注意してください。
①駅の窓口で直接購入する
一番シンプルでわかりやすい方法ですが、問題があるとすれば言語が通じるかどうか、希望の席に空席があるかどうかわからないということでしょうか。
言語に関しては、Vietnam RailwaysのHPで列車の時刻や目的地、座席のタイプは確認できますので、それをメモするなどして見せれば問題ないかと思います。一番の懸念点は、空席があるかどうかです。
特にベトナム人の休暇に当たる時期はチケットの販売が始まった瞬間から一斉に予約が埋まっていきますので、当日の席はほぼないと思っていいでしょう。また、寝台に関しては数が少ないこともあり当日購入できるのはかなり珍しいと思っておいていいでしょう。
②オンラインで購入する
Vietnam RailwaysのHPでは、車両や時刻表の確認のほかにオンライン予約もできます。ただし、決済に使用できるクレジットカードはベトナム国内で発行されたもののみなどの制約がありますので、現実的に考えてこの方法で予約するのは難しいです。また、オンライン予約のページはベトナム語のみですので、ハードルは高いと思います。
③旅行代理店などに依頼して購入する
現地の旅行代理店のHPなどを確認すると、チケットの代行手配を行っているところもあります。多少の手数料は取られますが、事前にチケットの予約ができ、なおかつ日本語で対応してもらえる可能性があるのはとても魅力的です。会社によっては、事前にバウチャー(チケット)をメールなどで送付してくれるところもありますので、事前に依頼しておくのが一番無難であると思います。
おわりに
今回は、ハノイとホーチミンを結んでいるベトナム統一鉄道(南北線)について
紹介しました。筆者もハノイからダナンまで乗車したことがありますが、一度は経験しておいて損はないという感じでした。スケジュールは出ていますが、時間通りに到着はしないものと思ってください。筆者が乗った時は1時間遅れくらいだったと思います。
ベトナム国内の移動であれば、飛行機が時間も早く値段もそんなに早くないのでおすすめですが、時間がある旅の時はぜひ試してみてください。それではヘンガップライ。