ベトナムの最大の年次イベント「テト(旧正月)」ってなに?歴史と伝統、現代のテトの様子を解説します

ベトナムの歴史
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Xin Chao!

皆さんは、「テト」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。あまりなじみのない人がほとんどなのではないかと思いますが、ベトナム人にとっては大事な行事です。今回はベトナムの「テト」について説明していきます。

テトとは?

ベトナム語では「Tết Nguyên Đán」となり、旧暦のお正月のことを表しています。中国の春節と同じ時期でベトナムのお正月だと思ってください。日本では、年が変わる1/1に信念をお祝いしますが、ベトナムでは旧正月にお祝いをします。

旧暦のため、テトの日時は毎年変わるため、ベトナムでは政府の発表を基にスケジュールが確定します。2022年は新暦1/31が旧暦の大晦日、2/1がお正月でした。

ベトナムは日本ほど祝日が多くなく、ゴールデンウイークなど大型連休は存在しません。テトを除くと祝日はたった5日ほどしかありません。しかし、テトの時期はベトナム国民の多くが大型連休となります。

ベトナムでは労働法でテト休暇は最低5連休(大晦日を含む5日間)と決められていますので、2022年の場合だと1/31から2/4までが国の定めるテト休暇でした。また2022年は、テト休暇の前後が土日でしたので、最大で9連休になった方もいらっしゃいます。

日本語の「あけましておめでとうございます」を意味する、「Chúc mừng năm mới」という言葉も存在し、テトの期間中はいたるところでこの言葉を目にします。

テトではなにをするのか

では、テト期間中は何をするのでしょうか。人々の過ごし方やテト料理などを紹介します。

テトの過ごし方

旧暦の大みそかには、家の中を掃除してきれいにするのが一般的です。掃除をすることで前年の不幸を取り除き、新年の準備をするという意味があります。また、大晦日の午後には、先祖を迎えるための食事を用意します。

夜には、先祖の供物台に備える食事と神様のために庭などに備える食事の2つを用意します。新年を迎える時刻には、多くのベトナム人が「Loc」と呼ばれる神社・お寺などに植えられている常緑樹の枝と葉を供物台に供え、一年の無病息災を祈ります。

旧暦の元旦が一番重要で、この日初めて来客者(Xong dat)が新年の幸運に影響を与えると考えられているため、事前に来客者を選び依頼していることもあるほどです。また、田舎に帰り家族そろって新年のお祝いをするのもこの日になります。この時にお年玉が配られることになります。

旧暦の元旦以降は、お世話になった方の下へあいさつ回りに伺ったり、お寺に行ったりします。旧暦の1/3には先祖を送り出すための食事を用意します。

近年では、家族そろって休みが取れる大型連休ですので、家族旅行に出かけたりすることも多いようです。この時期には、列車などの交通機関やツアー予約など早くから予約するベトナム人が多いこともあり、予約が取れないことも多いです。

また、観光地はベトナム人であふれ、どこも混雑しているような状態になりますので、外国から観光に来るのは避けたほうがいいでしょう。

テト正月飾り

Mâm ngũ quả(大きな皿の上に5種類の果物を並べたもの)や桃の花(北部のみ)、黄色い梅の花、キンカンの木(枝)を飾ります。Mâm ngũ quảは皿に並んだ果物の名前、色、並び方(盛り付け方)で家主の願いを表現します。テトの期間中は供物台に供えられ、旧暦の1/3には家族の幸運を願い家族全員に配られます。

テト正月料理

日本のおせちに当たる正月料理も存在し、家族そろって食べることが定番のようです。代表的な料理にバインチュン(Bánh trưng)やバインテット(Báng Tết)と呼ばれる物があります。青豆を潰したものや豚肉などをもち米で挟み、ココナッツやバナナの葉に包んで蒸した料理で、地方によって名前が変わりますが、中身はほぼ同じです。

贈り物

日本でいうところの「お歳暮」をお世話になった人などに渡します。贈り物の内容は様々ですが、近年では輸入菓子や外国産のお酒、高級食材などを送るのが喜ばれるようです。逆に、送ってはいけないものがあります。それは、時計や刃物です。時計は、時間を早める=寿命を早めることを意味し、刃物は関係を切ることを意味することになるため、タブーとされています。

テトのお年玉

ベトナムのお年玉は、基本的には赤い袋に入れて渡しますが、渡す範囲がとても広いです。社会人や既婚者が両親や収入がなかったり、収入が自分より低かったりする親戚の年長者、未婚者、未成年者へ渡します。会社の場合には、テト前にボーナスの支給があるため、上司から部下へ渡すことはあまりありませんが、ボーナスがない場合には、渡すこともあるようです。

金額はまちまちですが、50,000VNDや200,000VNDの紙幣は赤色で縁起が良いとされていたり、1ドル札や2ドル札も縁起がいい紙幣だと考えられているようです。筆者も、ベトナムでインターンをしていたころは、旧正月に社長から赤い袋をいただきました。(中身は50,000VND紙幣でした)

なぜ旧正月?

現在では、日本を含む殆どの国が太陽暦を採用していますが、文化的な面から中国をはじめとしたアジア、イスラム諸国では現在も太陽太陰暦を採用しており、「テト」の基準もこの太陰暦です。

アジア圏では、ベトナムのほか中国、シンガポール、マレーシアなど中国文化の影響を受けた国や華人の多い地域で旧暦の正月を祝う文化が残っています。ただし、月の動きを観測して暦が決まるため時差の関係で、各国ごとに大晦日の日にちが異なることもあるみたいです。

街中の様子

テト前

テトの1ヶ月くらい前から市場やスーパー、街中でお正月飾りや贈り物、お年玉袋などが店頭に並び、テトソングが流れ始めます。またベトナム北部では桃の花(魔除け)、桃の花が咲かない気候の中部〜南部は黄色い梅の花(金運アップ)や金柑の木(子孫繁栄や金運アップ)が売られ始めます。

また、新年を迎えてから外出するための服を新調する人も多いため、服が多く並ぶ場所もあります。また、街中では赤や黄色の正月飾りが設置されたり、菊や蘭をはじめとする色とりどりの花が飾られます。

日本でも、クリスマスなどの時期にイルミネーションが設置されたりしてにぎやかになりますが、ベトナムも同じように街中で新年を迎える準備をします。

テト中

テト期間中は、道端でよく獅子舞や龍舞の団を目にすることになります。獅子舞や龍舞は、繁栄や富を願うものとされているため、祝い事の際には目にする機会が多いです。

テト期間が始まるとほとんどの会社や店が休みになりますので、普段はにぎわっている街中も閑散とした雰囲気になります。普段はあんなに多いバイクもほとんど走っていないような状況になります。

テト後

テトの期間が終われば、普段の活気が戻ってきます。テトが終われば、水牛の闘争祭りやボートレース、相撲、獅子や龍の踊りなど各地でお祭りが開催されます。テト明けから長いもので1か月ほど続きますので、この時期を狙って観光に来るのもいいかもしれません。

テトの注意点

店が開いていない

前述のように、テトの期間はベトナム全体で休みになりますので、ほとんどの店は営業していません。しかし、働かなければならない職業の人もいます。テト期間に働く人の給料は通常の3倍以上にすることが、労働法で決まっています。

しかし、ベトナム人は給料が3倍になっても働きたくないと考える人が多く、4倍、5倍という設定をする企業もあります。その影響で、営業している飲食店や店があったとしても、値段がテト料金になっています。大体20%ほど値上がりしていることが多いですが、店によって値上げ幅は変わりますので、注意が必要です。

観光地は大混雑

先にも少し述べましたが、テト期間は家族の休みが合う数少ない機会です。そのため家族旅行に行く家庭も多いです。そのため、観光地は大混雑で、そこに向かう道路も大混雑している可能性が高いです。通常は20分ほどかかる場所でも、テトの時期には2時間以上かかることも考えられます。

テト後には退職者が増える

これは余談になりますが、テト期間後に退職者が多くなります。理由としては、ボーナスの額に不満がある、帰省した際に親に説得されるなどが多くなっています。また、テトの長期休暇でモチベーションが低下し、そのまま仕事に来ないということもあります。

まとめ

いかがでしたでしょうか。今回は、ベトナム人の特に重要視するテトについて紹介してきました。日本でもお正月にはお祭りのような賑わいになりますが、ベトナムも同じように新年のお祝いをします。

日本でもお正月働かなければならない人は多くいますが、企業によってはあるかもしれませんが、正月手当のようなものは特にないところが多いと思います。年末年始仕事をしながら、ベトナムのような手当がほしいと思った筆者でしたが、嘆いても仕方ありません。日本がいいほうに変わってくれることを願うばかりです。

では、またお会いしましょう。

ヘンガップライ!